FPの業務は保険、資産運用、年金、税金、相続などとても多岐に渡っています。
これらの業務にはたとえば保険であれば保険募集人、税金であれば税理士などそれぞれの専門家が存在しています。
なので、もちろんそれぞれの専門家でないとできない業務というものもあり、FPの資格だけでできることには限りがあります。
それぞれの専門家は弁護士であれば弁護士法、保険の募集については保険業法など個別に法律で規定されていますが、FPを取り締まる法律はありません。
ですが、FP業務を行うにあたっては各専門家に関する法律に違反しないように注意する必要があります。
簡単に言うと、各専門家の業務の領域を侵してはいけないということです。
ここでは、ほぼ毎年出題されているFPと他の専門家との関係と関連法規について、FPに「できること」と「できないこと」について確認します。
特に税理士法についてはよく出題されているのでしっかりと確認しましょう。
税理士法
税理士法とは税金に関する業務をおこなう税理士について規定した法律です。
顧客のライフプランを考えるにあたって、もちろん税金のことも考えなければいけません。
しかし、税理士資格を持たないFPは税務相談、税務代理、税務書類の作成など税理士法に規定されている個別具体的な行為を行うことはできません。
これは料金を受け取る有償のみならず無償でおこなう場合であっても禁止されています。
ただし、税金に関して一切の行為ができないというわけではなく、仮定の事例に基づく税金の計算や、一般的な税金、税法の解説であれば税理士の資格を持たないFPであってもすることができます。
保険業法
FPであれば保険の加入や見直しについて相談を受けることがあるでしょう。
ですが、保険募集人として登録を受けていないFPは、保険の募集や勧誘、契約の代理(販売)をおこなうことはできません。
ですが、保険商品の一般的な説明や必要保障額の試算、加入や解約、見直しなどのアドバイスは保険募集人の登録を受けていなくても可能です。
金融商品取引法
株式や債券、投資信託などへの投資について投資タイミングを指示したり、投資金額について具体的にアドバイスをする投資助言・代理業や投資運用業をおこなうには内閣総理大臣の登録を受ける必要があります。
つまり、「この銘柄にいくらいくら投資しましょう」などの個別具体的な商品をすすめることができないということです。
登録を受けていないFPができることは、これら金融商品の一般的な説明や過去の高値・安値などのデータを教えたりということに限られます。
[box class=”box26″ title=”補足”]金融機関に勤務している人は「証券外務員」の資格があれば金融商品を販売することができます。[/box]弁護士法
弁護士資格を持たないFPは顧客の債務整理や遺言書の作成など個別具体的な法律相談を含む法律事務をおこなうことはできません。
つまり、弁護士資格のないFPができることは法律に関する一般的な解説までということになります。
個別具体的な法律の判断や解釈が必要になったときは顧客に弁護士を紹介するなど協力を求める必要があります。
社会保険労務士法
社会保険労務士とは、労働法や年金などの社会保険に関し、これらの書類を作成、提出を代行する業務を独占しているプロフェッショナルです。
したがって、社会保険労務士 の登録を受けていないFPはこれらの業務をおこなうことはできません。
できることは、顧客の年金受給見込額の試算や、年金制度の一般的な説明ということになります。
関連法規のまとめ
資格がなくてもできること(〇) | 資格が無いとできないこと(×) | |
---|---|---|
税理士法 | 仮定の事例に基づく税金の計算、一般的な税法の解説 | 個別具体的な税務相談、税務代理、税務書類の作成(有償・無償問わず) |
保険業法 | 保険商品の一般的な説明、必要保障額の試算、加入や解約、見直しのアドバイス | 保険の募集・勧誘・販売、契約の代理 |
金融商品取引法 | 金融商品の一般的な説明、客観的な事実の説明 | 投資に関する助言、投資顧問 |
弁護士法 | 法律に関する一般的な解説 | 債務整理や遺言書の作成など個別具体的な法律相談を含む法律事務、個別具体的な法律判断 |
社会保険労務士法 | 年金受給見込額の試算、年金制度の一般的な説明 | 社会保険労務士の独占業務である書類の作成・提出 |
さいごに
ここでは、FPと他の専門家との業務の守備範囲について確認しました。
FPとしては、「個別具体的」なことは「できない」、「一般的」なことは「できる」と覚えておけばよいでしょう。